株主優待をローリスク・ローコストで取得する優待クロス取引(つなぎ売り)では、信用取引を活用します。
基本は、
- 権利付き最終日まで:現物買い+信用売り(空売り)
- 権利落ち日:現渡決済
という取引の流れなので、信用売りの取引を利用します。
ただし、買いのコストを抑えるために、現物買いに代えて、
- 信用買い+当日現引き(現物化)
という取引を行うこともありますので、信用買いも利用するシチュエーションがあります。
信用取引は、ざっくりいうと借りたお金・株での取引きのため、売買手数料とは別に、お金・株を借りるための金利がかかります。
この金利は、優待クロス取引においてはコスト(リスク)となりますので、正確なコストを見積もる上では、金利の計算方法について知っておくことが重要です。
ウサギマン
この記事の目次
信用取引でかかる金利|買い方金利・売り方金利・貸株料
株式の信用取引において発生する金利の類は3種類
- 買い方金利
- 売り方金利
- 貸株料(かしかぶりょう)
1つずつ確認しましょう。
買い方金利|信用買いでかかる金利
買い方金利は、信用取引で株を買った場合にかかる金利です。
信用取引の買いは借りたお金で株を買っているため、借りたお金に対して金利がかかります。
売り方金利|信用売りでもらえる金利、でももらえない(利率0%)
売り方金利は、信用取引で株を売った場合に、投資家がもらえる金利です。
バニ
と驚いた方、答えはイエスでありノーですw
空売りは、①株を借りる➔②借りた株を売る➔③株を買い戻す➔④株を返却するという4ステップ構造となっていて、2ステップ目で株を売った代金を一時的に証券会社に預けることになります。
理屈の上では、この預けたお金に対して、投資家側が金利の受け取りをすることができ、これが売り方金利と呼ばれているものなのですが、、、
現在は、どの証券会社でも売り方金利の利率が0%のため、実質的に金利は発生しません。
ウサギマン

貸株料|信用売りでかかる株のレンタル料
貸株料は、信用取引で株を売った場合にかかるコストです。
空売りは、①株を借りる➔②借りた株を売る➔③株を買い戻す➔④株を返却するという4ステップ構造となっていました。
貸株料は、1ステップ目の株を借りたことに対してかかるコストです。
ラビ
貸株料は、正確には金利ではありませんが、この記事では金利類としてまとめて説明しています
まとめ|信用買いでは買い方金利・信用売りでは貸株料がかかる
ということで、3つのうちもらえる可能性のある売り方金利が現実的にもらえないので、信用取引では、
- 買いでは買い方金利
- 売りでは貸株料
というコストが発生することになります。
バニ
ラビ
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金利類の計算
では、実際に買い方金利や貸株料はどのように計算するのでしょうか?
答えは下の式のとおりです。
- 金利(貸株料)= 約定代金 × 利率 ÷ 365 × 日数 ※小数点以下切捨
- 約定代金➔株を買った(売った)時の値段(株価)
- 利率➔年間の掛け率。証券会社や、信用取引の種類によって変わる
- 日数➔受渡日ベースの両端入れ。カレンダーで数える(土日祝日もカウント)
約定代金(株価)が高いほど、利率が高いほど、保有期間が長いほど金利はかさんでいきます。
そして、金利計算のポイントは保有期間である日数の数え方です。
金利計算における日数|受渡日ベースの両端入れ・営業日で数えない
金利計算における日数の数え方は、①受渡日ベース②両端入れ③営業日で数えない方法でカウントします。
①受渡日ベース
株は、買った日&売った日が、所有した日&手放した日とはならず3営業日後になり、この日を受渡日といいます。金利計算の日数はこの受渡日をべースにカウントします。
例)火曜日に信用取引で株を買い、水曜日に売った場合(祝日はなし)
➔受渡日ベースでは、金曜~月曜が保有期間
2019年7月16日からは受渡日が3営業日後から2営業日後へ短縮予定

②両端入れ
②両端入れとは、字のごとく両端の日もカウントするという意味です。
受渡日ベースで金曜~月曜が保有期間となった信用取引では、両端の金と月も数えます。
両端入れにより、当日中に信用取引の売買を完了した場合も1日分の金利が発生することになります。
例)信用買い➔当日中に現引き:1日分の買い方金利がかかる
③営業日で数えない
金利日数は、営業日ではなく、単純なカレンダーの日数でカウントします。つまり土曜、日曜、祝日も数えることになります。
受渡日ベースで金曜~月曜が保有期間となった信用取引では、土曜、日曜も1日としてカウントします。
例)火曜日に信用取引で株を買い、水曜日に売った場合(祝日はなし)
➔受渡日ベースでは、金曜~月曜が保有期間で、金土日月の4日分の金利がかかる
ラビ
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実践クイズ
では、最後に実際に買い方金利&貸株料を計算するクイズをしてみましょう。
問題1|2019年3月末の株主優待クロス取引
2019年3月末の株主優待取得で考えてみましょう。
2019年7月16日までは、受渡日は3営業日後
【問題】制度信用想定
- 権利付き最終日2019/3/26(火)に信用買い(約定代金100万円)&現引き
- 権利付き最終日2019/3/26(火)に空売り(約定代金100万円)、権利落ち日2019/3/27(水)に現渡決済
上記の取引を行った場合の買い方金利・貸株料はいくらでしょう?
買い方金利の利率は年2.80%、貸株料の利率は年1.15%とします。
【回答】
買い方金利:76円(1,000,000×0.0280÷365×1)
貸株料:126円(1,000,000×0.0115÷365×4)
信用買いは、当日決済のため、受渡日ベースで3/29(金)1日分の買い方金利
信用売りは、受渡日ベースで3/29(金)~4/1(月)の4日分の貸株料
問題2|2019年7月末の株主優待クロス取引
2019年7月末の株主優待取得で考えてみましょう。
2019年7月16日からは、受渡日は2営業日後
【問題】一般信用想定
- 権利付き最終日一週間2019/7/22(月)に信用買い(約定代金50万円)&現引き
- 権利付き最終日一週間2019/7/22(月)に空売り(約定代金50万円)、権利落ち日2019/7/30(火)に現渡決済
上記の取引を行った場合の買い方金利・貸株料はいくらでしょう?
買い方金利の利率は年2.80%、貸株料の利率は年3.90%とします。
【回答】
買い方金利:38円(500,000×0.0280÷365×1)
貸株料:480円(500,000×0.0390÷365×9)
信用買いは、当日決済のため、受渡日ベースで7/22(月)1日分の買い方金利
信用売りは、受渡日ベースで7/24(水)~8/1(木)の9日分の貸株料
ウサギマン
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おわりに
以上、信用取引でかかる金利類とその計算について解説しました。
制度信用での優待クロス取引(つなぎ売り)では、基本的には権利付き最終日➔権利落ち日の1泊2日の取引なので、
貸株料も1日分
と思いがちですが、両端入れのため最低2日、カレンダーによって土日祝日がはさまるとそれ以上の日数分金利(貸株料)がかかります。
一般信用の優待クロス取引(つなぎ売り)で、権利付き最終日より前から確保する場合には、保有期間が長くなり、その分貸株料がかさみ、場合によっては、貸株料が株主優待の価値を逆転することもあり、損をしかねません。
ラビ
なーんてことにならないように、信用取引にかかる金利類と、その計算方法についてはしっかり知っておきましょう。
ウサギマン