株主優待がもらえる権利確定日は、配当金の権利確定日でもある企業が多いですよね。
優待クロスとあわせて権利取得した配当金については、
- 現物買いの分、配当金がもらえて
- 信用売りの分、配当落調整金が引かれる
よって、損得なし!チャラ(ヘッチャラ)。
と理解している人が少なくないと思います。ただこれは、
ラビ
バニ
というのは、クロスの際の信用売りを一般信用で行ったか、制度信用で行ったかで配当落調整金の額が異なるからです。
結論としては、
- 一般信用なら配当金=配当落調整金となりCHA-LA(HEAD-CHA-LA)
- 制度信用なら配当金>配当落調整金となりちょっと得(利益)
ということになります。
このカラクリを確認していきましょう!
この記事の目次
制度信用と一般信用の配当落調整金のちがい
では、いきなり今回の記事の肝となる部分を紹介します。
信用取引の売りで、配当の権利確定日を持ち越した場合、配当落調整金として配当金相当額が口座から引かれますが、その具体的な金額は、制度信用売りと一般信用売りの場合とで下のように異なります。
信用取引売りの種類と配当落調整金の額 | |
制度信用の売建玉にかかる配当落調整金 | 配当金額の84.685% |
一般信用の売建玉にかかる配当落調整金 | 配当金額の100% |
制度信用の売りでは、配当額から所得税相当額(15.315%)を差し引いた額が配当落調整金となることに対して、一般信用の売りでは配当金全額が配当落調整金となります。
具体的には、配当金が2,000円の場合なら
- 制度信用の売建玉にかかる配当落調整金➔1,693円(2,000×0.84685)
- 一般信用の売建玉にかかる配当落調整金➔2,000円
となります。よって、
- 制度信用クロスなら配当金2,000円-配当落調整金1,693円で307円お得
- 一般信用クロスなら配当金2,000円-配当落調整金2,000円で損得なし
という関係となり、優待クロス取引の配当金・配当落調整金関係では制度信用クロスがちょっぴりお得になる結果となります。
一般化すると、配当金の15.315%分のお得、、、ではなく残念ながらお得(利益)分に税金がかかりますので(泣)それを考慮すると実際には配当金の約12%分程度のお得となりそうです。
税金考慮15.315×(1-0.20315)=12.20375775%(こまけぇ!)
ただし、制度信用クロスでは逆日歩リスクもありますし、手数料、貸株料等のその他コストもかかりますので、この配当金約12%のお得分はコストを和らげるもの程度に理解しておくことがよいでしょう。
ラビ
配当落調整金の額は制度信用ならどの証券会社でも同じですが、一般信用については証券会社によって変わるかもしれません
記事作成時点(2019/7/15)で確認した範囲では、優待クロス主要証券(日興、楽天、カブコム、GMO、SBI)の一般信用売りの配当落調整金はすべて配当金額の100%でした
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論より証拠|取引履歴で確認
本当にそうなっているのか、実際の取引履歴で確認してみましょう。
画像は、2019年2月末の優待クロスに対しての配当金、配当落調整金の履歴です@SBI証券。
ラビ
ドトールは100株を一般信用でクロスし、吉野家は100株を制度信用でクロスしました。
結果は
- ドトール@一般信用:配当金1,600円-配当落調整金1,600円
- 吉野家@制度信用:配当金1,000円-配当落調整金846円(1,000×0.84685)
となり、配当金、配当落調整金の関係ではやっぱり制度信用の方がちょっと得していますね。
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配当金・配当落調整金のややこしい現実
さて、優待クロスの配当金・配当落調整金でしたが、実はこれ、単純に損得なし(一般クロス)やちょい得(制度クロス)になるといってもそうなるまでにはちょっと複雑な事情があります。
これは制度信用、一般信用どちらの場合にもあてはまることなのでついでに紹介してみます。
- 配当金自体が税金を天引きされる
- 配当落調整金は譲渡損(売却損)として扱われる(配当所得とは別)
という2点の事実から、実際のチャラ(一般クロス)、ちょい得(制度クロス)が具現化されるには時間がかかる、場合によっては確定申告が必要になることがあります。
配当金自体が税金を天引きされる
ほとんどの方がご存じでしょうが、上場株式の配当金は所得税、住民税が源泉徴収(計20.315%)されます。
配当金額が2,000円でも、実際手元に入るのは税引き後の1,594円。
上場株式等の配当金は、配当金支払い額の20.315%が源泉徴収(天引き)
20.315%のうち、15.315%が所得税分、5%が住民税分
所得税分15.315%のうち、0.315%は復興特別所得税分で2037年分までの時限措置
さきほどの履歴を見ても
- ドトール配当金1,600円-源泉分税金325円=実際の入金1,275円
- 吉野家配当金1,000円-源泉分税金203円=実際の入金797円
というようにしっかり税金が天引きされています(ちっくしょー!)。
2銘柄で2,600円の入金があるように見えますが、実際は税引き後の2,072円しか口座に入金されていませんw
もちろん上場株式の配当所得は、譲渡所得(損)と相殺し、天引き分の税金を取り戻すことができますが、それは少なくとも年明け以降となります。
口座種別を特定口座(源泉徴収あり)+配当金の受取方式を証券口座受入れ(株式数比例配分方式)としている場合は、その口座の年間取引結果が譲渡損となった場合、自動的に配当所得と譲渡損が通算され、源泉徴収されていた配当の税金の一部または全部が証券口座に入金(還付)されます。
それ以外の方は、配当所得と、譲渡損の通算により税金を取り戻す場合、原則確定申告が必要となります。
特定口座(源泉徴収あり)の方は原則確定申告の必要はありませんが、上記例のような目的で確定申告をすると利益(税還付)が得られる場合があります
しかし、確定申告をすると税金を取り戻す以外の副作用(扶養家族から外れてしまう、国保や介護保険料が上がるなど)もありますので十分注意が必要です
数年前から、所得税と住民税の申告内容を別々にすることも可能になって、株式の税申告判断はより難しく複雑になりました。
詳しくない方は、口座種別:特定口座(源泉徴収あり)+配当金受取方式:証券口座受入れ(株式数比例配分方式)にしてなるべく申告をしなくてすむようにしておくことがおすすめです。
配当落調整金は譲渡損(売却損)として扱われる
配当落調整金の税金上の所得区分は譲渡所得となり、株式売買の所得区分と同じになります。
信用買いでもらった配当落調整金は売却益、信用売りで支払った配当落調整金は売却損とみなされるわけですね。
配当金は配当所得という区分なので、配当金と配当落調整金は別の所得区分となります。
さきほどの取引履歴の配当落調整金で差し引かれた2,446円(1,600+846)は譲渡損になります。
譲渡所得の損失と配当所得は先ほど説明したとおり、随時相殺はされずに年明けに口座で自動精算となるか、確定申告をして相殺するかのどちらかとなります。
ただし、口座種別を特定口座(源泉徴収あり)にしている場合は、日々の売買で生じた同一口座内の譲渡益と譲渡損は都度通算され源泉徴収税額が最適化されます。
上記口座は特定口座(源泉徴収あり)。どうやら配当調整金が引かれる前にその額以上の譲渡益があり税金も天引きされていたようなので、配当調整金分の売却損2,446円に対する税金分が還付されています(498円)。
これは同時期に入金された配当金の源泉徴収税額と相殺されたものではないのでご注意ください。
仮に、この口座の取引が画像の履歴だけの場合
- 配当金分の税金は引かれたまま(配当所得2,600円:税天引き528円)
- 配当落調整金の損との税金の相殺はしばらくなし(譲渡損2,446円:税還付なし)
そして年明け
- 口座種別:特定口座(源泉徴収あり)+配当金受取証券口座受入れ(株式数比例配分方式)なら、配当分の配当所得と配当調整金分の譲渡損が自動で通算(配当所得2,600円-譲渡損2,446円)され過払い分の税金が口座に入金(還付)
- それ以外なら、自分で確定申告し還付を受ける
という流れになります。
とはいっても現実的にはクロスだけしていたって手数料や貸株料、逆日歩といったコストも譲渡損に計上されてしまいますし、クロス以外の売買もしていればその損益とともにごちゃごちゃになってしまっているのが一般的でしょう。
ラビ
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おわりに|制度クロスは配当の約12%お得
以上、優待クロス取引にかかる配当金・配当落調整金についてのお話でした。
- 制度信用売りと一般信用売りでは配当落調整金の額がちがうよ
- 制度信用売りの方が配当落調整金の額が少ないよ
- 結果、制度信用クロスなら配当金の約12%分お得だよ
- でも制度クロスは逆日歩があるから怖いよねーw
- 一般、制度、一概にどちらがいいということではないよ
- ちなみに配当金からは税金が天引きされるよ
- そんで配当と配当落調整金は所得区分がちがうよ
- だから損益通算までには時間がかかったり確定申告が必要な場合があるよ
- 確定申告は副作用もあるからするかしないかは結構判断が難しいよ
- 源泉あり特定口座+配当証券口座受入が無難かもね
おおむね上記のような内容だった気がしますが、伝わりましたでしょうかw
個人的には制度クロスしようと考えている銘柄が、そこそこ配当もある場合
ラビ
くらいに考える材料としています。
バニ
ラビ
ウサギマン

