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国民健康保険料(税)は、年間(4~3月)の上限額が設定されています。
この上限額(賦課限度額)は、国民健康保険料は支払い能力(収入)に応じて公平に負担する必要があるものの
上限なしで高すぎる保険料になってしまうと「受けうる医療サービス」と「保険料(税)」とのバランスを欠いて支払う気がなくなる人がでてきかねない!それはヤバい!
という考え方から法令で定めれられているものですが、この上限額はここ数年どんどん上がっています。
推移やその理由をみてみましょう
国民健康保険料(税)賦課限度額推移
早速、表に2008年度以降の国民健康保険料(税)の賦課限度額の推移をまとめました。
と、その前にちょっとだけ説明を
国民健康保険料(税)は世帯単位で計算、用途によって3区分に分けて算定されており区分ごとに上限額があります。
国保料(税)の計算区分
- 基礎:基礎賦課分→国保加入者の医療費用の保険料
- 後期:後期高齢者支援金分→後期高齢者医療制度(75歳以上の保険制度)への上納金
- 介護:介護納付金分→介護保険料部分。介護保険制度への上納金
基礎分、後期分は加入世帯はもれなくかかり、介護分だけは40歳~65歳の加入者にだけかかります。
では表をどうぞ!
国民健康保険料(税)賦課限度額推移|2008年度以降(単位:万円) | ||||||
年度 | 1基礎 | 2後期 | 1+2 | 3介護 | 1+2+3 | 前年比 |
2008 | 47 | 12 | 59 | 9 | 68 | - |
2009 | 47 | 12 | 59 | 10 | 69 | +1 |
2010 | 50 | 13 | 63 | 10 | 73 | +4 |
2011 | 51 | 14 | 65 | 12 | 77 | +4 |
2012 | 51 | 14 | 65 | 12 | 77 | ±0 |
2013 | 51 | 14 | 65 | 12 | 77 | ±0 |
2014 | 51 | 16 | 67 | 14 | 81 | +4 |
2015 | 52 | 17 | 69 | 16 | 85 | +4 |
2016 | 54 | 19 | 73 | 16 | 89 | +4 |
2017 | 54 | 19 | 73 | 16 | 89 | ±0 |
2018 | 58 | 19 | 77 | 16 | 93 | +4 |
2019 | 61 | 19 | 80 | 16 | 96 | +3 |
2020 | 63 | 19 | 82 | 17 | 99 | +3 |
2021 | 63 | 19 | 82 | 17 | 99 | ±0 |
2022 | 65 | 20 | 85 | 17 | 102 | +3 |
なんと2008年度から2022年度の14年で、基礎+後期で59万円から85万円(約44%増)、介護込みだと68万から102万円(50%増)となりましたw
やべぇw
国民健康保険料(税)の賦課限度額はなぜ上がる?
では、国民健康保険料(税)の賦課限度額はなぜここまで上昇しているのでしょうか?
「単純に高齢化などで医療費が上がっているから」ということは当然ですが、それ以外に上限額増加の理由は2つの観点から説明できます。
中間層への保険料負担増緩和
1点目は、医療費の上昇による中間層への保険料負担増を緩和するためです。
国民健康保険制度は、必要な医療費を加入者の保険料+補助金等でまかなうのが基本の仕組みです。
高齢化や医療の高度化(高額化?)により必要な医療費が増えており、加入者の保険料負担も増えていかざるをえないわけですが、加入者を
- 低所得層:所得がない or かなり低い層
- 中所得層:①でも③でもない層
- 高所得層:保険料が上限に達している層
の3つの層に分けた上で、それぞれ保険料上昇(掛け率の上昇)の影響をみていくと
- 低所得層:所得がないので掛け率が上がってもほぼ影響なし
- 高所得層:掛け率が上がっても上限に達しているので影響なし
となってしまい、その結果中所得層が上昇分をすべて引き受ける構造となり負担が重くのしかかっているということになっています。
賦課限度額上昇は、このような中所得層への過度な負担をやわらげる目的があります。
高所得層の負担を上げて中所得層の負担を減らす、と
健康保険制度との比較
2点目は、健康保険制度との比較の観点です。
会社員などが加入する健康保険では、加入者の0.5~1.5%が最高額の保険料となるような仕組みになっています。
この観点で国民健康保険料をみると上限額に達している世帯が1.5%以上いるので…
じゃあ、健康保険並みの%になるように上限を引き上げていこ!
ということで、健康保険のように上限の世帯が1.5%を下回るくらいまで上限額を引き上げていくことを目安として、ここ数年引き上げが続いています。
そんなことより所得に対する保険料負担額に着目すべきでは…
国民健康保険料(税)の賦課限度額はどこまで上がる?
では、一体どこまで上がっていくのでしょうか?
わかりませんw
しかしながら上記の健康保険の上限到達割合が目標として意識されていますから、同じくらいになるまでは引きあがっていくものと考えた方がよいかもしれません。
2022年度は国保全体で1.52%だそうなのでもうイイとこまではきてるっぽいのですが…計算区分内でのバラつきもあり、まだあるのかな…と。
ちなみに、健康保険の代表、全国健康保険協会(協会けんぽ)の2022年度の最高額は、
- 介護保険料なし:月額68,180円、年818,160円
- 介護保険料あり:月額79,578円、年954,936円
でした(東京支部)。
国保は2022年度で、介護なし年85万円、介護あり年104万円なので、額面的には遂に超えました…
ぴえん
国民健康保険料(税)の賦課限度額|2023年度はどうなる?
さて、2023年度はどうなるでしょうか?
どうやら2023年度も引き上げか?…という状況です(2022/10/28現在)。
国民健康保険料(税)は、国民健康保険法に基づき「保険料」として賦課するか、地方税法に基づいて「保険税」として課税するかを自治体ごとに決められるという摩訶不思議な制度で、自治体によって保険料であったり保険税であったりします。
国民健康保険税側の根拠の地方税関連改正事項については、例年年末に発表される与党の税制改正大綱でおおよそを知ることができます。
この大綱を指針とし、法改正案が年明け以降の国会で審議→議決となってめでたく?限度額が変わります。
が、だいたい秋に厚生労働省の医療保険部会という部会の場で案が示されることが一つの流れとなっています。2022年も10月28日開催の第156回社会保障審議会医療保険部会にて国保料の限度額が議題に上がり、資料では
令和5年度においては、限度額(合計額)の超過世帯割合が引き上げ前において既に1.5%台に到達しているところ、後期高 齢者支援金賦課分の超過世帯割合が2%を超え、前年と比較して大幅に増加しており、基礎賦課分、後期高齢者支援金等賦課 分、介護納付金賦課分のばらつきも拡大している。
このため、令和4年度と同じ割合の世帯が、令和5年度にも賦課限度額に該当するよう、医療分の賦課限度額を「2万円」 引き上げることとしてはどうか。
第156回社会保障審議会医療保険部会 資料より
という厚生労働省案がでており、この通りとなると
基礎分+2万円の上限引き上げ
- 介護保険なしでは、年間87万円
- 介護保険ありでは、年間104万円
が上限となっていく見込みです…
この案に対して委員の方からの大きな異論がでないようであれば、おそらくこれに沿った内容で12月頃に与党自民党の税制改正大綱が示され、年明け以降の国会で法令改正がなされていくのではないでしょうか…
(‘A`)
追記2022年12月16日に令和5年度与党税制改正大綱が示されました。この中で国民健康保険の賦課限度額は…
国民健康保険税の後期高齢者支援均等課税額に係る課税限度額を22万円(現行:20万円)に引き上げる。
令和5年度与党税制改正大綱より
とあり後期分が2万円引き上げに。厚労省案の医療分ではありませんでしたが、どちらも被保険者全員に影響する区分なので上限2万円引き上げという事実は変わらず…
おわりに
以上、ぐんぐん上昇している国民健康保険料(税)の賦課限度額の推移や背景をみてきました。
該当になる所得層の方にとっては「またかよ…」とげんなりしてしまうかもしれません。
国民健康保険料(税)の場合自治体格差も深刻で、所得が少ない地方の自治体だと必要な医療費をまかなうために保険料の掛け率が高くなり、都市部と比べてより少ない収入でも上限額に達してしまうという事態も起きています。
少子化や高齢化の問題を考えると気が滅入ってしまいますが、とにかく医療サービスのお世話になりすぎないよう健康でいましょう…
ひとりひとりの草の根、健康運動で医療費総額を抑えましょ!
こんな高い保険料を払っているんだから、医者にかからなくちゃ損!みたいな考え方で皆が行動するとさらにおそろしい保険料増となりますから…
気持ちは分かりますケド…