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4月1日生まれは早生まれで、4月2日以降の誕生日の子よりもクラスが一つ上になる。
なぜでしょう?
実はこの現象、人はいつ年をとるかを規定した不思議な法律によって起こっています。
学齢だけでなく、この事象は、様々なライフステージで1日生まれの人を不思議な事態へといざないます。
そんな日本の不思議な年齢計算方法をみてみましょう!
年齢計算の根拠:「年齢計算ニ関スル法律」と「民法143条」
日本の年齢計算は「年齢計算ニ関スル法律」というそのまんまの法律と、そこから準用される「民法143条」に定められています。
年齢計算ニ関スル法律
年齢計算ニ関スル法律
(明治三十五年法律第五十号)・年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス
・民法第百四十三条ノ規定ハ年齢ノ計算ニ之ヲ準用ス
・明治六年第三十六号布告ハ之ヲ廃止ス
以上が「年齢計算ニ関スル法律」の全文です。
この法律は、記載のとおり3つの項目しかない非常に短い法律で、なんと明治の頃から存在している法律です。
カタカナ表記が時代を感じさせるりゅ
その内容をやさしくまとめると、
- 生まれた日から数え始めるよ!
- あとは民法143条のとおりだよ!
となります(雑)。
続いて民法143条です。
民法143条
民法
(暦による期間の計算)
第百四十三条1.週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2.週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
重要なところは「起算日の応答する日の前日に満了とする」という部分です。
これにより、年齢は誕生日(起算日に応答する日)の前日の満了(午後12時)をもって加算されるということになります。
図にすると下のようになります。
誕生日になった瞬間ではなく、誕生日の前日が終わる瞬間が年をとる時点となります。
この時点が誕生日ではなく誕生日前日に所属しているため、日本では誕生日の前日に年をとる(年齢が加算される)ということになっています。
屁理屈みたいに感じるわ
7月7日生まれの人は、7月6日に年をとり、4月1日生まれの人は3月31日に年をとることになるのです。
特に1日生まれの人は前日加算によって誕生月が変わってしまうことになり、これが理由で一般感覚と乖離した事象が様々なライフステージで現れることになります。
記事冒頭の学校の学年もその一つ。代表的なものをいくつかみてみましょう。
年齢に関わるライフステージ:1日生まれは特別?
6歳~:学齢(学年)
学校教育法
第十七条保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。~
小学校など学校は4月2日生まれ~翌年4月1日生まれの子までが同学年となりますが、この根拠は学校教育法の義務教育を定めた条項に規定されています。
条文により満六歳に達した日翌日以後の4月から小学校入学となりますが、4月1日生まれの子は3月31日に6歳になる計算のため、その翌日の誕生日4月1日が最初の学年の初めとなり誕生日の年度からすぐに小学校が始まります。
対して、4月2日生まれの子は4月1日に6歳となり、翌日4月2日以降に訪れる学年の初めが約1年後の4月1日となるため、小学校の学年が4月1日以前・4月2日以降でわかれることになります。
就学の保育園なども法令上の規定はないようですが、就学を踏まえ通常4月2日~翌年4月1日生まれの子ども達でクラスを編成しています
20歳~:国民年金保険料
(被保険者期間の計算)
第十一条被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した日の属する月からその資格を喪失した日の属する月の前月までをこれに算入する。
20歳になると国民年金の支払いが始まります。
国民年金は月額で納付しますが、納付のスタートは「被保険者の資格を取得した日の属する月から」となります。
1日生まれの人は、前日年齢加算により誕生日の前の月で年齢が加算される扱いとなり、2日以降生まれの人より1か月早く支払いが開始します。
例えば、12月24日生まれの人は20歳になった12月分から納付が開始となりますが、12月1日生まれの人は12月生まれでありながら11月分から納付開始となります。
そのぶん支払い終了が1か月早いから損得はないですね
40歳~:介護保険料
介護保険法
(資格取得の時期)
第十条前条の規定による当該市町村が行う介護保険の被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至った日から、その資格を取得する。
一 当該市町村の区域内に住所を有する医療保険加入者が四十歳に達したとき。~
40歳になると原則介護保険に加入となり、介護保険料の支払いがはじまります。
介護保険料も月割りで計算され、40歳になった日に加入で40歳になった月分から請求が始まりますが、ここでも1日生まれの人は誕生月の前月に40歳となってしまうため、1か月早く支払いが始まります。
介護保険は40歳以降ずっと保険料がかかりますので、1日生まれで1か月早く支払いが始まるのは損な感じがしますね
70歳~:健康保険の自己負担割合
健康保険法
(一部負担金)
第七十四条~
二 七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合(次号に掲げる場合を除く。) 百分の二十
~
医療費の自己負担割合は、70歳になった翌月から一定の収入基準を超えていない場合3割負担から2割負担へと下がりますが、ここでも前日年齢加算が炸裂します。
例えば、10月10日生まれの方は70歳になった翌月11月から2割負担となりますが、10月1日生まれの方は誕生月は9月と判定されるため、10月から2割負担となります。
1か月早く医療費が安くなるからこれは1日生まれ大勝利ね!
【例外】75歳~:後期高齢者医療制度
高齢者の医療の確保に関する法律
(資格取得の時期)
第五十二条後期高齢者医療広域連合が行う後期高齢者医療の被保険者は、次の各号のいずれかに該当するに至つた日又は前条各号のいずれにも該当しなくなつた日から、その資格を取得する。
一 当該後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する者(第五十条第二号の認定を受けた者を除く。)が七十五歳に達したとき。
2008年から、原則75歳以上と対象とした医療保険制度「後期高齢者医療制度」がはじまりました。
やはり保険料は月額で、加入月から計算されます。法令によると75歳に至った日からの加入となるので、ここまで見てきた他の例と同様であれば、1日生まれの方は前月からの加入となるわけです。
が、しかし!
「後期高齢者医療制度」の加入については「年齢計算ニ関スル法律」による前日年齢加算が適用されておらず、普通に誕生日から入ることになっています。
1月1日に75歳になった方は、12月でなく1月から後期高齢者医療の保険料が計算されます。
それでいいんですかね…
だったら他もわかりやすく誕生日当日からカウントにしてくれればいいじゃん
おわりに
以上、不思議な年齢加算の時点でした。
年齢は誕生日の前日に加算されているということでした。わかりにくいですね!
この件で1日ずれに対応するためのシステム構築や、1日生まれの方からの問い合わせ対応などで結構な労力・経費が割かれているであろうことを思うとなんだか残念な気がします。
そしてそれはこれからも続くのでしょう。
とはいえ、現状がこうなっているのであれば「そういうもんか」と理解するしかありません。
1日生まれの方!皆さんは特別な存在です!
ソウイウモンカ